今こそ農業に誇りを

執筆/園山宗光

農業は人が生きていくのに欠かせない食べ物をつくる仕事。今ほどその重要性を感じることはなかったように思います。

「これからは農業の時代だ」ともう随分前から色んな人が言ってはいましたが、現実には農業の高齢化はどんどん進み平均年齢は67歳、食料自給率は過去最低の37%にまで下落しました。農業をやっている親世代がこどもに対して「農業は大変だからするな」という声もあるほど、私たちの生命の本を作る農業界は自らの仕事に誇りを持てない時代が続いたのではないかと感じます。

平成が始まる時には自給率が50%あったので、この30年で自国の食料自給をいかに軽視してきたかが分かります。海外の自給率を見てみるとアメリカが130%、フランス127%、ドイツ95%、イギリス65%などと“自国で食べるものは自国で賄う”という国の姿勢が数字に表れています。

中国から始まった新型コロナウイルスは瞬く間に世界中に広がり、主要な都市を機能不全に陥れています。人も物も動かせない「鎖国」のような状態で各国が自国民の食糧確保に動く中、日本はまだ足下に迫る食糧危機はまだ実感としてはないのかもしれません。しかし食糧を自国で賄える他国と違い、日本は融通してもらわなければ賄えない。いわば自分たちの食卓を6割以上は他国に預けているようなものです。とても不安定な、これこそ緊急事態宣言を出すような話だと思います。

鹿児島に「正しい食べ物を創る会」という有機農業の火が灯ってから40年余りが経ちました。「創る会」は発足当初から生産者と消費者が手を取り合い、主に食べ物や農業の問題と向き合ってきました。今はNPO法人かごしま食の家族として有機野菜の宅配事業に取り組んでいます。県内には有機野菜専門店・地球畑3店舗を構える「かごしま有機生産組合」もあり、有機農業のパイオニアたちはそれぞれの立場で有機農業と向き合ってきました。
その礎のもと、私たちの会社も農業に安心して取り組み、レストランを経営することができています。

これからは日本も食糧を生み出す産業を大きく伸ばし、今回のようなグローバルな問題が起こった時にも地に足をつけてどしっと構えられるようにしたいものです。先代が取り組んできたこの40年に自信と誇りを持ち、次の時代にしっかりと受け継いでいく必要性を強く感じています。

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