有機農業拡大に必要な3つのこと

 色々あった2021年も残すところわずかとなりました。世の中の変化があまりにも早いので、うっかりしていたら時代に取り残されそうな感じさえあります。そんな中ですが、今年5月に農水省から発表された、有機農業を大きく拡大する方針「みどりの食料システム戦略」には度肝を抜かれるとともに、期待に胸が躍らされました。

 有機農業の取組面積を現在の1%未満から25%へと、欧州の有機農業先進国並みの水準まで引き上げるというものです。2050年までに達成する方針なので、まだ随分先だと思われるかもしれませんが、すでに農業界では変革が起きつつあります。夢にまで見た「有機農業が当たり前になる時代」に私たちは足を踏み入れました。これから新規参入が相次いでくるであろう有機農業の時代において、40年以上にわたり鹿児島の有機農業に携わってきた私たちができることは何だろうと、今から真剣に考えています。今後ポイントになりそうなことが3つあります。

 1つ目は、全く知られていない頃から有機農業の可能性に着目し、土づくりを続けてきた先駆者の方々のこれまでを知ることです。有機農業2代目の私たちはその土台の上に立っていますが、応援者も技術もないところから始まってここまでに到達するのは相当な辛抱強さが必要だったと思います。その努力を知り、これからも忘れることなく次の時代に伝えていきたいものです。

 2つ目は、今後のニーズに対応できるだけの生産技術の向上と仲間づくりです。有機農家は各地でポツンと一人でやっているケースが少なくない上、それぞれのやり方も千差万別です。このため、先進的な技術を学ぶ機会も少なく、農産物の品質にはどうしてもバラつきが出ます。それを解消すべくグループ化を図り、共に切磋琢磨して品質や食味を上げていく必要があります。

 3つ目ですが、有機農産物を求める消費者や販売者と積極的な交流をすることでつながりを深め、農産物の販売拡大はもちろん、規格外野菜を活用した加工品や惣菜なども積極的に開発し、有機農業現場の下支えをしていくことです。その上で「稼げる有機農業」を実現することができれば、消費者・販売者のきめ細かいニーズに対応できて、慣行農業からの参入の呼び水にもなると考えています。

 今こそ有機農業に関わる2代目たちがリーダーとなって、次の時代の新しい枠組み、連携を強化していくことによって、大きなうねりを作っていきたいと思います。

農業生産法人そのやま農園株式会社
代表取締役 園山 宗光

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